ラインはサマー・キャンプで,子どもたちと簡単なあてっこコンテストをすることからはじめた。ラインが数を書いたカードを手に持ち,子どもたちはそれをあてようとする。答えはあたりかはずれかである。秋の新学期になると,今度はデューク大学の心理学部の学生たちと同じような実験をした。ただし今回は,カードは封をした封筒に入れておいた。催眠状態になると被験者のESPが強化されるかどうかを見るための実験もした(当時はまだ催眠の可能性が注目を集めていたのだ)が,注目すべき結果は得られなかった。しかしひとつ明らかになったのは,普通のトランプを使うと,人々は無意識に自分が好きなマークや好みの数字を選ぶ傾向があるということだった。大学内には超心理学研究に適した学部はなかったが,とりあえず心理学部は研究を歓迎してくれていた。ラインがトランプカードと人の好みに関連する問題に直面したとき,この問題を解決したのも心理学者だった。ラインが心理学者カール・ゼナーに助けを求めると,ゼナーは新しいカードをデザインしてくれたのだ。カードは1組25枚で,5種類のカードが5枚ずつあり,それぞれ,円,四角,十字,波線,星が描かれていた。ぜナーが選んだ5種類の図形は,人々の好みが偏らないように選ばれていた。しかし,のちにゼナーはラインの研究にひと役買ったことを後悔し,これをゼナーカードと呼ぶのをやめさせようとする日が来る。だがこの時点では,ラインと心理学部の人々の関係は心の底から友好的で,カードの開発は進歩であり,マクドゥーガルはこのうえなく満足していた。その年の11月には,「わが同僚ラインは(霊との交信ではなく)透視としか呼べない結果を得つつある」と,西海岸のアプトン・シンクレアに手紙を書いている。
ステイシー・ホーン ナカイサヤカ(訳) 石川幹人(監修) (2011). 超常現象を科学にした男:J.B.ラインの挑戦 紀伊國屋書店 pp.42-43
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