ただし霊による憑依とされる場合は,事情が異なってくる。被害者の身体を乗っ取った悪魔やその手下がすることは,被害者の健康と幸福に対する宣戦布告である。シュルツ牧師がラインに手紙を書いたとき,メリーランドの当事者一家は,問題の原因は単なるポルターガイストではないとして,ローランドを悪魔祓いのためにセントルイスのイエズス会に連れて行っていた[悪魔祓いをするのはカトリック教会の神父のみ]。ほとんどのポルターガイスト事例に共通する特徴のひとつは,それが短期間で終わることだ。不可解な現象はたいていものの数カ月で消え去り,関係者の見解は,現実は,想像派,悪戯派に分かれるが,現象が再発しないため結論は出ずに終わるのが通例である。もちろんメリーランドの少年の家族は,その現象が短期間で終わるなどとは思わなかった。しばらくして新聞がこの話を記事にし,ウィリアム・ピーター・ブラッティという大学生がそれを読むことになる。ブラッティはその記事から着想を得てベストセラーとなる小説『エクソシスト』を書き,映画化されて全世界で大ヒットした。ブラッティは子どもの年齢,性別と他の詳細を変えているのだが,ライン宛に書かれたシュルツ牧師の手紙の内容を見れば,思いあたるところがある人は多いはずだ。
ステイシー・ホーン ナカイサヤカ(訳) 石川幹人(監修) (2011). 超常現象を科学にした男:J.B.ラインの挑戦 紀伊國屋書店 pp.113-114
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