その後何年もかけて,メリーランド事例について詳しい事情が明らかになってきた。どうやら発端はウィジャボードらしい。現在市販されているようなウィジャボードを世に広めたウィリアム・フルド自身も,これが霊的作用で動くとは信じていなかった。フルドは特許申請書に「質問が発せられると,コマが競技者の不随意筋の動きあるいは他の作用の結果により,テーブルの上で動きはじめる」と書いている。ローランドの事例では,人々は「他の作用」が悪魔そのものだったと信じたわけである。超心理学研究所のスタッフは,なるべくウィジャボードを使わないように勧告してきた。ウィジャボードに夢中になっている使用者からの手紙を受け取ったときに,スタッフのひとりは「そういう流行ものから得られる情報は,信ずべきものではありません。ちょうど悪夢と同じように,無意識が生み出しているものなのです。あなた様の健康のためにもウィジャボードを破棄し,すべて忘れてしまわれることをお勧めします」と返答している。2001年にウィジャボード使用者調査に回答した人のうち3分の2は,ボードで好ましくない体験をしたと答えている。悪意のある恐ろしいものと遭遇するとも言われているのだ(にも関わらず,これは今でも人気商品である)。
ステイシー・ホーン ナカイサヤカ(訳) 石川幹人(監修) (2011). 超常現象を科学にした男:J.B.ラインの挑戦 紀伊國屋書店 pp.124
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