ラインは研究者としての仕事をはじめたとき,霊媒ミナ・クランドンについての報告で,「通常の行為やトリックでは説明できず,また解釈に矛盾もないとほぼ確実に言えるようでなければ,それは科学ではないし,心霊現象について何かを知ることもけっしてできないだろう」と書いた。
ラインは人生の終わりにこの言葉を思い出しただろうか?
多くの人々がライン夫妻の研究を,彼自身の言葉と同じように結論づけている。モーリー・バーンスタインは,「デューク大学のJ.B.ライン博士のような科学者は,人間の心が5枚のカードのうち1枚を正しくあてることができるかということを証明するためだけに,超心理学でこれだけの年月を費やしたわけではない」と述べている。しかしラインの研究が,やがてすべてを変えるだろうと予想したものがいたにも関わらず,彼の研究は長いあいだ無視されてきた。ゲイザー・プラットと他の人々は,かつて「これからは超心理学の時代だ。科学の冷笑による試練の時代は去ったのだ」と時期尚早の勝利宣言をしたものだが,実のところ,超心理学は敗北したのだ。
4分の3世紀前,デューク大学の科学者たちは無名の力の存在を繰り返し証明し,それを「超感覚的知覚(ESP)」と呼ぶことにした。それから現在まで,科学はその存在について確信を持って否定することも,もっともな別の説明をすることもできないでいる。残念ながら,超心理学分野自体も「それ」にはっきりとした光を投げかけることができなかった。
手詰まりである。
ステイシー・ホーン ナカイサヤカ(訳) 石川幹人(監修) (2011). 超常現象を科学にした男:J.B.ラインの挑戦 紀伊國屋書店 pp.294-295
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