さて,フリーターという言葉が世間に登場したのはバブル経済の最中である,1987年のこと。当時の就職事情は大卒,高卒ともに売り手市場。卒業したら会社に就職するのがまだ当たり前という時代だった。「フリーター」という言葉は元々アルバイトで生計を立てている若者の間で使われていた言葉だったようだが,それに目を付けたのはアルバイト雑誌『フロム・エー』を出版していたリクルートだ。表向きにフリーターという言葉が使われたのは,1987年に公開された横山博人監督の映画『フリーター』だ。この映画はリクルートの出資により制作されたものだ。映画がヒットし,フリーターという働き方が若者の憧れになれば,アルバイトの求人誌という市場は大きくなる。そういう抜け目のないところはさすがリクルート。この国の労働観はある意味,リクルートの手のひらの中で転がされてきた。
速水健朗 (2008). 自分探しが止まらない ソフトバンク クリエイティブ pp.86
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