心理主義というのは,「あなたらしさは何?」「やりたいことは何?」と,いわゆる自分探しに重きをおくタイプだ。大企業に就職すれば,誰もが幸せというわけではない。だから,1人ひとりの「価値観」にあった企業選びが大事だというわけである。
VPI職業興味検査をはじめとする心理検査の結果を使い,学生個人と特定の職業を結びつけてみせたりする。VPI職業興味検査はハローワークでも用いるごく一般的な就職支援の手法だが,就職が目前に迫っているわけでもない大学定額年次にこれをやらせる。マインドマップを作らせたり,独自に編み出した心理テストを用いる人もいる。
小ネタで使うぶんには構わないが,それらを中心に据えてくるから困りものだ。
検査がはじきだした個々の価値観に基づいて進路を選べたらあなたは幸せですよね,というスタンスで授業を進める。これはその「価値観」の中に職業選択の正解があるという前提にしている点でヘンなのだ。
大学生はまだ自分の外側の社会をほとんど知らない。その段階であたかも算術のように出た心理検査の結果を「正解」かのように伝えてしまうと,ますます自分の内側ばかりを見たがり,これから知るべき外の世界に目を向けなくなる。
本物の心理学者や臨床心理士だったら,そんな危ういことを決してしない。
沢田健太 (2011). 大学キャリアセンターのぶっちゃけ話:知的現場主義の就職活動 ソフトバンク クリエイティブ pp.42
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