3つ目の能力主義とは,たとえば先述した「コミュニケーション能力」の偏重だ。コミュ力を高めよ,と言われ始めて十年は経つ。が,どうやったら高められるのか,クリアに答えられる人の存在は寡聞にして存じあげない。眉ツバ系の自己啓発書の世界に行けば,いろんなメソッドがあふれかえっているらしいけど。
コミュ力と並んで「社会人基礎力」も流行っている。2000年代の中頃に経済産業省が提唱した概念で,「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」の3つを核とする。
それぞれあったに越したことはない力だが,はてさてどうしたもんだろう。
「努力」「気力」「忍耐力」「創造力」「団結力」など,昔から掲げられてきた「〜力」がある。新しい「〜力」は古臭くなってしまったこれらの力を組み合わせて,なにかあたらしい概念を生み出したつもりになっているだけでは?
沢田健太 (2011). 大学キャリアセンターのぶっちゃけ話:知的現場主義の就職活動 ソフトバンク クリエイティブ pp.43-44
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