就職率の計算式で気をつけたいのは分母である。本来ならば,就職率すなわち就職希望決定率の分母は,全卒業生数から「進学者」「留学者」と「就職を希望しない者」を引いた数とするのが適当だ(進学者には「就職できなかったので仕方なくそうした人」が,就職を希望しない者には「途中で心が折れて諦めた人」などが混じっているけれども)。
が,それだけでは分母が大きくなってしまうからと,「進学不明者(心理未決者)」,状況不明者(回答未収)を外す。海外からの留学生は内定すれば分子にカウントするが,就職が決まらず(留学ビザが切れるため)母国へ帰る学生については,「帰国者」として処理され,就職希望者ではないとする。
やりかたがひどすぎると思うのは。公務員再受験予定者などを外す計算法だ。在学中に公務員試験を受けた学生も「就職を希望した者」に他ならないはずで,受かった場合は華々しく大学入学案内やキャリアセンターのHPで紹介されるが,来年以降も受験するハメになった学生については分母から消される。資格試験を目指す者,進学や就職準備中の者も同様だ。
なんだかんだのセコ技で分母を削り,分子は都合よく膨らます。大学によって細かな違いはあるものの,就職率の計算式はおおよそこうなっている。
なぜ高等教育機関である大学が,こんな作業に精を出すのか?
簡単に言ってしまえば,大学としての生き残り競争にさらされているからだ。潰れるわけがない大学であっても,同じ階層の他大より劣っていると見られたくないからだ。
沢田健太 (2011). 大学キャリアセンターのぶっちゃけ話:知的現場主義の就職活動 ソフトバンク クリエイティブ pp.84-85
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