就活ナビサイトは「一応」日本の就職活動生全員に,求人情報を公開している。
以前は,特定のいくつかの大学にしか送らなかった求人票を,企業がナビサイトに求人情報として掲載することで,「誰もが」「どこの企業へも」採用選考にエントリーできるようになったわけである。
結果,以前だったら,「うちの大学からは難しいだろう」と避けていた企業にも,新卒募集の応募をする学生がわんさかと出てきた。
手書きのハガキで応募していたかつてより,パソコンを使ってエントリーする今のほうが心理的負荷は小さい。そんな些細な話も含めて応募の「自由化」が起こり,「知名度の高い社会」「身近なイメージの会社」の人気が沸騰したのだ。
たいした志望動機がなくても,とりあえずエントリーする。とりあえずすることによって,学生は就職活動をしている気分になり,受かるはずもない企業へのエントリー数を増やし,どこかには受かるだろうと甘い幻想を抱く。
いまや十単位の採用に万単位の人数の応募が来るケースも珍しくない。マスコミのような宝くじ的倍率の就職人気企業があちこちに存在する。
事実上の学校指定制度に近かった,あるいは大学階層と企業階層が近似していた就職活動が,IT革命で下位校の学生でも有名企業の門を叩けるようになった。とも言えなくはない。実際,門を叩いて,その先のお屋敷に入ることになった例も,ごくごく稀にある。
けれども,そうした「功」よりも,「罪」のほうがやっぱり目立つ。「機会の平等」以上に「現場の混乱」をもたらしたのが,ナビサイト主導の就職・採用活動なのだ。
沢田健太 (2011). 大学キャリアセンターのぶっちゃけ話:知的現場主義の就職活動 ソフトバンク クリエイティブ pp.98-99
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