いまの就職活動生は縁故採用を嫌う。縁故採用というのは,血縁つながりだけでなく,それこそ何らかの縁で自分を気に入ってくれた大人の推薦による採用も含まれる。
なぜ縁故採用がNGなのか。
理由は前述の指輪と少しにており,仲間がみんな就活で苦労しているのに自分だけ脇道を通って内定を取るのは不正みたいな感じがする,というものだ。ある種の正義感が過敏に働くのだ。
就職活動中に縁故の話が転がりこんできて,「どうしたらいいでしょう」とキャリアセンターまで相談しに来る学生はちょくちょくいる。不正とは違うことを説明しても,「入ってから苦労しますよね」「あとあと嫌な思いをするんじゃないか」と妙に悩む。
理解に苦しむのは,自分の能力が引き寄せた縁故で悩む学生である。たとえば,アルバイトで接客したお客さんが,「いい子だな」と思って人事に働きかけた。このパターンで悩む学生は多い。ゴルフ場で受付をしていて,その働きぶりが気に入った経営者から声をかけられた。そんなラッキーケースでも悩む。個別相談で泣いてしまう。
バイト姿が評価されたのだから自慢してもいいくらいなのに,そう思わない,そう思えない。困った意味でマジメ,普通じゃない事態に腰が引ける。そんな大学生が男女を問わずかなりいる。
縁故を「コネ」と読んで,そこに黒っぽいイメージを重ねてきた世間のほうにも問題があるのかもしれない。「あの子はコネだから」「そうだと思ったよ」という職場での会話の中に,プラスの要素は見つけづらい。
沢田健太 (2011). 大学キャリアセンターのぶっちゃけ話:知的現場主義の就職活動 ソフトバンク クリエイティブ pp.174-175
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