キャリアセンターの仕事は基本的に待ちの姿勢である。学生が機嫌をそこねて来なくなってしまったら,対処のしようがなくて困る。怒鳴れない最大の理由がそれだ。
が,もっと恐れている理由もある。リストカットされたら大変だからだ。
これは比喩ではない。誤解を恐れずに言うと,「この子,少し様子がヘンだな」と感じたとき,私は反射的に学生の手首をちら見している。例外とは片づけられない確率で痕がついているものだ。
痕を見つけたら,言葉遣いにより慎重を期する。間違っても質問魔にはならない。しばらくは聞き役,うなずき役に徹する。それ以上の何かをしてあげられると勘違いしてはならない。しかし,どんな事情があるにせよ,自分の進路を考えたいと思っていることは事実だ。それには,私もちゃんとした姿勢で向き合わなければならない。
沢田健太 (2011). 大学キャリアセンターのぶっちゃけ話:知的現場主義の就職活動 ソフトバンク クリエイティブ pp.178
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