安全だけを追求していくなら,必要のないものは焼却処分してしまうのがもっともいい。しかし,資源の上手な利用,環境保全を考えると,安全追求はほどほど,資源の再利用,リサイクルもほどほどでバランスをとっていく,というやり方に行き着く。
逆に言うと,リサイクルをするのなら,潜在的なリスクがあることを社会が共通認識として持ち,リスクをどこまで許容するか,という議論しておく必要がある。とりわけ,生き物が絡むリサイクルは難しい。生物の細胞中には,どのような性質を持つかまだ突き止められていないタンパク質や遺伝子がごまんとある。異常プリオンのような致死的なタンパク質,第二のBSEが今後,さらに明らかになる可能性が絶対にないとは言えない。生物の世界はまだ分からないことだらけである。
また,病原性微生物も環境中に数多く存在する。リサイクルの管理に問題があれば,病原性微生物が一気に増殖し,毒性物質を産生したりもする。生き物のリサイクルはある意味,何が起きているか,何が含まれているか分からないブラックボックスである。
しかし,日本ではリサイクルのリスクが議論となることは少ない。マスメディアも取り上げない。リサイクルは,「もったいない」を解決する手段として賛美され,それ以上の議論には進展しいない。
松永和紀 (2010). 食の安全と環境:「気分のエコ」にはだまされない 日本評論社 pp.164-165
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