東大と京大で卒業生は毎年6000名,これに,北大・東北大・名古屋大・大阪大・九州大を合わせるともう1万9000名となる。一方私立では,早稲田と慶應の卒業生だけで毎年1万8000名。つまり,早慶旧帝大で卒業生総数は3万7000名。さらに,東工大・一橋・東京外語大・神戸大といった専門分野のトップ大学を加えると,年間卒業生は4万5000名に迫る。
そう,超のつく難関大学の卒業生だけでも4万5000名もいる中で,人気企業の採用は平時で2万,多くて3万。難関大出身者でさえ,容易にこんな企業には入れていない。そんな企業群の「慣習」である新卒固執が,世間の常識となる異様さ。そして,マスコミがこの目立つ存在である「人気企業」×「難関大学生」にばかりスポットを当てた過誤。こんなボタンの掛け違いで,就職問題は解決とはほど遠い方向に動き出してしまった。大学は年間約55万人も卒業生を生み出す。そのうち就職希望者は45万人程度。そして就職できる人はアベレージで35万人。対して,たかだか採用ワク2万(卒業生比たった4%!)の人気企業の風習をいじったところで,大方の一般大学生にとっては何の問題解決にもならないはずなのに。
海老原嗣生 (2011). 就職,絶望期:「若者はかわいそう」論の失敗 扶桑社 pp.15-16
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