そう,理系と異なり文系の場合,おおよその仕事は世界どこでもあまり「大学の専門」とは関係がないのだ。専門が生きるのは,金融・マーケティング・法務などを専攻した人のうちさらに「上位学生のみ」というのが正解だろう。
とすると,一般文系大学生はどうやって仕事を手に入れるのか?
欧米でも「カードル」や「リーダーシッププログラム」(以下LP)という名の超エリート向けに,新卒幹部候補の未経験採用はしているが,これは日本では考えられないほど狭き門となる。上位大学の成績優秀者しか応募資格はない,と,入り口で言明されているからだ。だから日本のように,誰でも彼でも大手人気企業に応募する,ということはない。
ではどんな就活があるのか?
一般に,大手企業はLPやカードルのほかに,若年者に対して「エントリーレベル採用」という入り口を用意している。LPやカードルが職務未決定の日本型総合職に近い採用とすれば,こちらは,職務を決めたいわゆる欧米型採用となる。このワクは,比較的習熟度の低い若手に対して広げられた「職務限定採用」で新卒・社会人関係なく25歳くらいまでがそのターゲットとなっている。これが多くの識者やマスコミが称揚する「欧米の良い慣行」「日本が見習うべき手本」というものにあたる。
さて,ではここに職務未経験の新卒者は採用されるか?欧米でも日本同様「将来性」や「人物」を見込んだポテンシャル採用はないわけではないので,少数は確かに採用されるだろう。年齢が関係ないので,院卒や既卒留学生などもそこに含まれる可能性はある。それがギャップ・イヤーなどとカッコいい言葉で呼ばれたりもする。
しかし,現実は甘くない。やはり職務契約での採用だから,即戦力で仕事ができる人が優先される。だから採用者の大半は「社会人での同職経験者」となる。つまり,未経験学生は採用されにくい。
となると,上位層でもなく,経験もない一般大学生はどうするのか?
まずは,欧米でも離職率の高いブラック企業は新卒未経験採用を大量に行っている。こんな企業に入るのが1つ目の選択肢。2つ目は,アルバイトやインターンといった低給与・不安定な身分で1〜2年下働きをしながら腕を磨いて職を探す。これが2つ目の選択肢。
とどのつまり,ブラック企業での正社員か,中小企業のインターンで何年か働いたのち,ようやく大手企業のエントリー採用にて職を見つけられる可能性があるが,それも日本同様,やはり狭き門である。そして,多くは無名企業にて正社員となっていく。
海老原嗣生 (2011). 就職,絶望期:「若者はかわいそう」論の失敗 扶桑社 pp.17-19
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