要は,「若年中途採用」というパンドラの箱を開けなかったことで,超大手人気企業×新卒未経験者という組み合わせが奇跡的に続いてきた。そこに,昨今の「既卒3年=新卒扱い」策により,一穴が開けられる。そして,人気大手企業の採用が,「既卒無業者」ではなく,「既卒社会人」に流れ,学生とフリーターはさらに苦しくなっていく……。
こうした慣行が人気大手企業に根付くと,中小やいぶし銀大手なども新卒採用に対する態度が変わり出す。なぜなら,「どうせ育てたところで,優秀な奴は,大手人気企業に引き抜かれていく」と考えるからだ。そこで,中小やいぶし銀大手が新卒採用を続けるにしても,インターンやアソシエイトという名の「非正規」が主流となり,また,入社後の教育活動にも力を入れなくなっていく。どこかで見た雇用慣習だとお気づきだろうか?
そう,欧米の「苦しい若年雇用」そのものなのだ。ここから脱却するために,欧米諸国がどれほど施策を繰り出してきたか。職業教育制度や横断資格など,この矛盾のために作ったようなものなのだ。なのに,その欧米へと,スキップしながら,昨今の日本は進んでいる。
海老原嗣生 (2011). 就職,絶望期:「若者はかわいそう」論の失敗 扶桑社 pp.28-29
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