現在は4月1日が採用解禁なのに,なぜ,半年もたった10月末以降に3割以上の学生が就職を決めているのか。
この構造を説明しておこう。
ほとんどの学生は,まずは人気企業を志望する。高校から大学を受験するときは,誰もが「東大・京大」を受験はしないのだが,こと就職となると,本当にほとんどの学生が名うての人気企業から応募していくのだ。
学生たちの声を聞くと,「ペーパー試験の点数だけで判断される受験のようなシビアな世界ではなく,就職は“人間性”を見てもらえる世界だから,けっこう,自分も意外に高評価を受けて,いい企業に受かるかもしれない」,もしくは「どうせ落ちるかもしれないが,受験料がかかるわけでもないので,ダメもとでたくさん受けてみようか」といった声をよく聞く。
現実的には,1月末から佳境となる会社説明会に「参加権をもらえない」学生や,説明会後の集団面接の結果,「もう呼ばれなくなる」学生も多く,その時点で「超大手は難しい」と薄々感じているのだが,まだ4月までは誰にも内定が出ていない状態だから,そういう企業が「無理」とはっきり思わないままに4月を迎えるのだ。
海老原嗣生 (2011). 就職,絶望期:「若者はかわいそう」論の失敗 扶桑社 pp.73-74
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