いや,学生に限ったことではない。転職エージェントに相談にくる社会人とて,まったく同じ状況なのだ。転職エージェントにエントリーしてから転職が決定するまでには,大体,5か月ほどかかっている。そのうちの最初の2か月がまさに,「落ちて落ちて落ちまくる」ことにより,相場観が形成される時期に当たる。このときに,いくら「無理」「高望みはするな」「キャリア相応の企業を」とデータや心理的アプローチで説得を試みても,そのとおりに納得してくれる求職者は少なく,不合格を累々と積み上げることになる。
もう少し詳しく書いておこう。一体,転職希望者たちがエージェントを通して転職を決めるまでに,どれくらいの不合格が生まれるか。その数は,不況期だと大体70本近くになる。好景気でも,決定1に対して,不合格は30本といった割合。そう,学生よりも社会を知り,企業のことも良くわかり,自分の実力さえわかっている社会人でさえ,こんな感じ。それも,熟練のキャリアアドバイザーが伴走しても,こうなのだ。
市場相場に詳しくない駆け出しの大学付きキャリアカウンセラーが,学生らを説き伏せて,リードタイムを短くすることなど,可能性は0に等しいだろう。
海老原嗣生 (2011). 就職,絶望期:「若者はかわいそう」論の失敗 扶桑社 pp.78-79
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