では,転職率の高いジョブホッパーとはどんな存在なのか。これが,世の中の人の理解と少々異なる。
確かに,即戦力のハイパーな経営層・技術者なども少なからず存在する。ただ,経営層の場合,最低でもバイスプレジデント(事業部長程度)でないと,右から左へとスカウトされて転職することは難しい。技術者と名のつく人たちでも,30代後半以降だと,一部の金融業やIT系のプロジェクトリーダーなどを除くと,右から左への転職はやはり厳しくなる。とりわけ,日本の課長に相当するミドルマネージャークラスでは,同業・同職・同規模という縛りの中でしか,転職可能性は少ない。これが現実なのだ。
つまり,ほんの一部のハイパーゾーンのみ,会社に頼らず自由に転職を繰り返す権利を有する。
これとは別に,世間の人の常識とは異なる転職層が存在する。
それは,「比較的難易度の高くないエントリーレベルの仕事(=熟練がそれほど必要ない仕事)」をしている人たちなのだ。販売やサービス関連の仕事,もしくは営業でも個人訪問型のセールスや,商品や値段の決まったカタログ販売の延長であるパッケージセールス(自動車や保険など),IT系ならプログラマーやWebデザイナーといった人たち。彼らの転職率は驚くほど高い。
会社に頼らず自由に生きていこうと思ったら,よほどのピンになるか,それとも比較的エントリーレベルに近い仕事をし続けるか。要は,この2つの選択肢になる。
転職率こそ違え,日本でもこの法則は成り立っている。
海老原嗣生 (2011). 就職,絶望期:「若者はかわいそう」論の失敗 扶桑社 pp.101-102
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