たとえば,「格差の主因は非正規雇用」というOECDの訳知り顔レポート(06年)により,これも定着した感がある「貧困=非正規」という構図だが,年間所得200万円未満世帯の構成比では,高齢者が5割であり,次に多いのが約2割の失業者,その次が正社員での低所得者,さらに自営業者と続き,非正規世帯はたった7%弱。
若年(15〜24歳)層の2人に1人が非正規社員とこれも声高に叫ばれるが,中身を精査すれば,248万人いる若年非正規のうち,115万人は学生バイトでこれを除けば,非正規数は半減する。
最近の新しいところでは,「若者が内向きになったから海外留学が4割も減っている」という妄言もこの類だろう。97年に4万6000人いた留学生が,現在は2万7000人と4割減!が彼らの挙げる数字だが,この数字は全部「アメリカへの留学生数」。近年では中国やアジアへの留学生が増えているので,全世界への留学生は97年当時6万2000名だったものが,現在6万7000名と1割程度増えている。この間に,留学適齢期と言われる18〜29歳の人口は27%も減っているにも関わらず,だ。確かに留学生総数の方も,05年以降は減少傾向にある。ただ,この減少幅も約15%であり,前述の「留学適齢人口」の減少で説明できる範囲に留まる。
海老原嗣生 (2011). 就職,絶望期:「若者はかわいそう」論の失敗 扶桑社 pp.118-119
PR