日本の官僚はそれほどバカではない。明らかにこうした数字が間違いということを知っている。たとえば,「若年非正規率は高いが,その実態は学生バイトが大半」ということが,総務省統計局の労働力調査を見るとすぐにわかるのだ。
そこにある「雇用形態別就労者数」では,01年の詳細集計より,非正規のうち「学生」という欄ができている。この前年に玄田有史氏の一連の著作により若年非正規の問題に注目が集まり始めたため,「うち学生バイト数」という項目を作ったのだろう。そして,この項目ができていることから見ても,官公庁は「若年非正規に占める学生バイト」の多さを知っている。
同様に,世帯別年収については,厚生労働省が「国民生活基礎調査」で詳しく調べている。このデータでは,高齢世帯の平均所得が240万円,4割が年収200万円未満とも記載されている。ワーキングプア論の原典,民間給与の実態調査の個票は,扶養家族か否か,家族専従員かどうか,は一目でわかる構造だ。
要は,お役所の人たちは,こんな「都市伝説」がかなり大げさに作られた虚像だということをすべてわかっている。なのに,あえて反論しない。
その理由を一言で言おう。こうした「都市伝説」により,予算がガッポガッポ増えていくから。私にはそうとしか思えないのだ。
海老原嗣生 (2011). 就職,絶望期:「若者はかわいそう」論の失敗 扶桑社 pp.119-120
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