そもそも,どうしてこんなミスマッチが起きるのか。それこそ,現代日本特有というか,脱工業化社会共通の現象でもある。その昔,建設・製造業中心の時代は,仕事内容も非常に見えやすかった。何をいつまでに組み立てるか,それが基本で,そのスキルをつけて手順を間違えなければ,誰でもある程度は仕事をこなすことができたからだ。こうした仕事は,不況ならば労働時間は短縮し,好景気だと残業が増える,というところもわかりやすかっただろう。だから,外からも仕事の内容が推測でき,なるべく自分に合う仕事を選ぶことが可能だった。
ところが,ホワイトカラー系の仕事が中心の現在となると,営業などがその最たるものだが,仕事に正解はなく,十人十色のやり方となる。仕事量は,好景気にはもちろん多いが,不況期でも「お客を見つける」ために忙しくもなる。もう,外から見てどんな仕事でどれくらい忙しいのか,など見当がつかない。
さらに,大企業での採用なら,各社のブランドイメージで,会社の社風やカラーなども何となくわかるが,中小企業だとそれさえわからない状態となる。
製造・建設などの第二次産業から,第三次産業が中心となることと,大卒者の雇用の中小企業シェアが上がることで,これだけ就労環境は変わってしまった。だから,正社員になれない(ならない)人たちが生まれていくのだろう。
この状況の解決は,「企業に採用を増やせと号令をかけること」や「若者に教育訓練を施すこと」といった,第二次産業中心時代の施策では埋まらないはずだ。
海老原嗣生 (2011). 就職,絶望期:「若者はかわいそう」論の失敗 扶桑社 pp.172-173
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