私は大学で学ぶアカデミズムにも2つの種類があると考えている。
1つは,学者になるための勉強だ。とにかく1つのテーマを突き詰めて,徹底的な専門性を身につけていく。これは「普通の人」が社会で使える可能性は低いが,社会全体の文明レベルを上げるために,「図抜けた優秀者」が取り組む高度に専門的な勉強だ。
もう1つは,物事を考える能力を学ぶことだ。たとえば,1つの命題が正しいのかどうかを判断するためにはどのような事例を集めればいいのか,どのような角度から検証すればいいのか,といったことを勉強する。こうした「本当の意味で物を考える力」は社会に出ても使える。営業するにも,企画を考えるにも,必要なデータを集めてきて,それを読み取り,相手の理解度を予測したうえでわかりやすく説明するといった力は必要である。流行の言葉でいえば,これが「リベラルアーツ」となるだろう。
海老原嗣生 (2011). 就職,絶望期:「若者はかわいそう」論の失敗 扶桑社 pp.203-204
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