では,日本の総合職と欧米の社員の違いは何か?
にわか論者が語らない決定的な違いがここにある。
日本の総合職は「幹部候補」,という点なのだ。この点,お気づきだろうか?
欧米の場合,幹部候補と非幹部候補に分かれている。ものすごく粗っぽく言えば,出世できる人とできない人に分かれているわけだ。フランスなら,この幹部候補を「カードル」と呼び,アメリカやドイツなどでは,近年,「LP(リーダーシッププログラム)と呼んでいたりする。
大手有名企業でこのワクに入るためには,超上位校を優秀な成績(GPAの指定等ある)で卒業し,法律やメーケティング,会計など将来企業経営に資する知識を十二分に蓄えていることが条件となる。
これはある面,常識的な慣行ともいえる。かくいう日本でも,公務員の世界では,一種試験を合格した「キャリア」と,それ以外の「ノンキャリ」に分かれ,出世するのはキャリアのみ,というしきたりがある。軍隊ならどこの国でも,士官学校出身者の幹部候補と徴兵・志願組の兵卒とで出世に大きな差が出る。そして,欧米系のエリートも,日本のキャリア官僚も士官学校の将官も,相当難易度の高い試験を課され,入り口で選抜されている。そう,日本の[総合職」を除けば,おおよそ「幹部候補」といわれる人たちには,ほぼ同様な仕組みが,かなり広く浸透していると言えるだろう。
逆に考えると,日本の企業社会が,あまりにも異質なことが理解できるだろうか?現在,大学さえ出ていれば,タテマエ上は大学偏差値も大学での専攻も大学での成績も,まったく何も問われずに,企業に採用される。そして,その採用者は,全員が「幹部候補」となっている。小学生が考えても,「そんなにたくさん幹部って必要なのか?」と疑問が湧くだろう。
海老原嗣生 (2011). 就職,絶望期:「若者はかわいそう」論の失敗 扶桑社 pp.238-239
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