今の若い芸人の番組なんかだと,最初のメインがなくて,遊びの部分ばかり多くてゲームになってる。本当は何をしたいのかが,どうもよくわからない。そもそも芯になる,やりたいものがないのか,15分とか20分の長くてしっかりしたコントをつくるのが大変だから逃げてるのか。そのあたりが,僕には不満なところだ。
でも,そのつらいところをしっかりつくっておくと,ほかのコーナーが生きてくる。『加トケン』でも投稿ビデオのコーナーがおもしろいってよく言われた。視聴者がホームビデオで撮った楽しいビデオを紹介するやつだ。僕が考えた企画だけど,TBSがそれをアメリカの放送局に売ったら,向こうでも人気番組になって,それからアメリカのおもしろビデオが日本に入ってくるようになった。TBSでは,今でもその系統の番組をやっているけどね。とにかく,あの投稿ビデオは『全員集合』だと中盤の合唱隊にあたる,息抜きのコーナーというつもりで発想したものだ。
そんな遊びのコーナーが印象に残るのは,逆に言うと,メインのコントをしっかりつくってあったからだ。見てる方は,メインがおもしろいのは当たり前だと思ってるから。
志村けん (2002). 変なおじさん[完全版] 新潮社 pp.85-86
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