すでに多くの研究によって,医療ミスは「個人のミス」にその原因を追求しても意味のないことだというのが常識になっています。日本で聞き及ぶように,医療のミスに対して「研修医個人を訴える」というような事例はナンセンスです。研修医がミスをした背景には,その監督不行き届き,チェック機能の破綻など,システム面での問題も間違いなくあるからです。このようなトカゲの尻尾切りをしていても根本的な問題の解決にはなりません。ひどい目にあった患者さんから見れば,目の前の医師をこらしめれば敵討ちにはなるかもしれませんが,そのようなむなしいカタルシスを得て,どうしようというのでしょう。
と,いう話をニューヨークの友人にしたら,「馬鹿だな。研修医なんて金持っていないんだから,訴えたってしょうがない。訴えるのなら当然金のある病院だろ?」だそうです。
岩田健太郎 (2003). 悪魔の味方:米国医療の現場から 克誠堂 pp.84
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