IQのスコアからは,どんなことが予測できるだろうか?まず何よりも,学校での成績を予測できる。100年以上前にアルフレッド・ビネーがIQテストを考案したのはまさにそのためだったので,これは驚くにはあたらない。ビネーは,正規教育に向いておらず特別な処置を必要とすると思われる子供を選り分けられるようにしたいと,IQテストを考え出したのだった。今日,典型的な知能テストのスコアと成績との相関は,およそ0.50だ。かなり大きな値だが,学力を予測するうえで,IQテストでは測れない変数をいくつも考える余地はある。
IQテストはおもに「分析的知能」と呼ばれるものを測っていて,「実践的知能」とは区別される。分析的問題は,たいてい他者の手でつくられ,明確に定義されていて,解くために必要な情報はすべて問題文のなかに盛り込まれており,正しい答が1つしかない。そして,普通は決まった1つの方法でしか答にたどり着けず,多くの場合日常の経験と密接に関連しておらず,その問題自体は特別興味深いものでもない。
「実践的問題」はそれとは対照的に,解くべきものがあることを認識しなければならないが,通常はっきりと定義されておらず,解くうえで関係する情報を探さなければならないことが多い。また,考えられる解が何とおりかあり,たいていは日常の経験に潜んでいて,解くためにはそうした経験がなければならず,そして内発的動機づけを必要とする。
リチャード・E・ニスベット 水谷 淳(訳) (2010). 頭のでき:決めるのは遺伝か,環境か ダイヤモンド社 pp. 16-17
(Nisbett, R. E. (2009). Intelligent and How to Get It. New York: W. W. Norton & Company)
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