IQは知能の一要素にすぎない。実践的知能や創造的知能はIQテストではうまく評価できないが,これらの知能を考慮に入れれば学力と職業上の成功の両方をよりよく予測できる。これらの種類の知能に対する尺度をうまく改良すれば,IQテストによって測られる分析的知能と同じく重要なものになるかもしれない。
どんな種類の知能をどのように測定したとしても,学業や職業上の成功を予測するための指標の1つにしかならない。情緒的なスキル,自制,そしておそらく動機づけや性格に関係する他の要因も重要だ。
このようにIQの重要性には種々の限定条件があるが,さらにつけ加えれば,ほとんどの企業は社員に,一定レベル以上であれば知能をことさら求めていないようだ。それよりも,労働倫理,信頼性,自制,根気強さ,責任感,コミュニケーション力,チームワーク,変化に対する順応性を重んじているという。
つまり,IQが知能のすべてではないし,また,IQのスコアよりも幅広く知能を定義したところで,学業上の成功や職業上の成果に影響を及ぼすただ1つの重要な要因ということにもならない。さらに,学業上の成功だけで職業上の成功を予測することもできない。
リチャード・E・ニスベット 水谷 淳(訳) (2010). 頭のでき:決めるのは遺伝か,環境か ダイヤモンド社 pp. 22-23
(Nisbett, R. E. (2009). Intelligent and How to Get It. New York: W. W. Norton & Company)
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