バスケットボールを例に考えてみよう。平均より少し背が高い子供は,他の子供よりバスケットボールをやる可能性が高く,楽しんでプレーをして,プレーの回数も多く,コーチに目を掛けられてチームに入らないかと誘われることが多い。背が高いことが強みになるかどうかは,このような環境的出来事によってそれが発揮されるかどうかにかかっている。そして,別々に育てられた一卵性双生児は,背丈が高いためにバスケットボールで似たような経験をし,最終的にバスケットボールで似たような力を身につけるだろう。
しかしバスケットボールの力が似ているのは,2人がまったく同じ「バスケットボール遺伝子」を持っているからではない。そうではなく,もっと限られた属性において遺伝的に同じで,それによってバスケットボールに関係した経験が極めて似てくるからだ。
似たようなことが知能についても言える。たとえば好奇心に関して遺伝的に比較的小さな強みを持っている子供は,親や教師に学問の道を目指すよう励まされ,知的活動が報われることを知り,勉強して他の知的訓練にも取り組むようになる。こうして,遺伝的強みを持たない子供より賢くなるわけだ。たとえ遺伝的強みがごくわずかでも,環境という「増幅器」を働かせて効果を生み出すことができる。強みを発揮するにはそれが極めて重要だ。
リチャード・E・ニスベット 水谷 淳(訳) (2010). 頭のでき:決めるのは遺伝か,環境か ダイヤモンド社 pp. 35
(Nisbett, R. E. (2009). Intelligent and How to Get It. New York: W. W. Norton & Company)
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