労働者階級の子供も読んだことについて質問されるが,本の内容と外の世界を結びつけることにはあまり努力が払われない。本にアヒルの子の絵が出ていれば,母親は子供に池で見たアヒルを覚えているか尋ねるだろうが,そのとき,本に出ている黄色いふわふわしたアヒルの子と池にいたおとなのアヒルとの関係は説明しないかもしれない。3歳頃を過ぎると,読み手との会話のやりとりは奨励されず,解説や質問は邪魔だと見なされる。(フィラデルフィアでおこなわれたある研究で,社会階級による読み書き能力の差を端的に表している事実とその原因が示されている。成人のほとんどが大学教育を受けている地域では,書店に並んでいる児童書の数は子供100人あたり1300冊だった。一方,ブルーカラーのアイルランド人や東ヨーロッパ人の地域では,子供100人あたりわずか30冊だった。社会階級による読み書き能力の差をこれほどまでありのままに示した数値は,他にほとんどないだろう。)
リチャード・E・ニスベット 水谷 淳(訳) (2010). 頭のでき:決めるのは遺伝か,環境か ダイヤモンド社 pp. 112
(Nisbett, R. E. (2009). Intelligent and How to Get It. New York: W. W. Norton & Company)
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