キャロル・ドゥエックらは,ほとんどをマイノリティーが占める中学生の集団を対象に,能力に関する考え方を調べ,「人は一定量の知能を持っていて,それを大きく変えることはできない」,あるいは「自分の賢さは必ず大きく変えられる」といった言葉を信じるかどかを尋ねた。予想どおり,能力は勉強遺憾だと考える生徒のほうが,能力は遺伝子によって決まると考える生徒より成績が良かった。
続いてドゥエックらは,マイノリティーの貧しい中学生たちに,知能は大きく変えることができ,懸命に勉強することで伸ばせると納得させようとした。この介入の主眼は,学習によって新たな神経結合をつくることで脳に変化を起こし,そのへんかのプロセスに生徒たちを関わらせることだった。ドゥエックの報告によれば,頑健な男子中学生のなかにも,自分の知能は自分でかなり制御できると聞かされて泣き出した生徒がいたという。
そして教師曰く,この介入を受けた生徒は,より真剣に勉強し,統制群の生徒よりよい成績を取ったという。この介入は,知能は懸命に勉強するかどうかで決まると元から考えていた子供に対してよりも,知能は遺伝子の問題だと信じていた子供に対してのほうがより有効だった。
リチャード・E・ニスベット 水谷 淳(訳) (2010). 頭のでき:決めるのは遺伝か,環境か ダイヤモンド社 pp. 180
(Nisbett, R. E. (2009). Intelligent and How to Get It. New York: W. W. Norton & Company)
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