最後に,貧しい人を賢くしたければ,その人たちをもっと豊かにさせるのがよい方法かもしれない。スカンジナヴィア諸国は所得配分に関してアメリカよりはるかに平等主義で,最富裕層の子供と最貧困層の子供との学力差もそれに応じた程度になっている。社会的価値がある正当な仕事に対しては,家族を養うのに十分な給料を支払うべきだ。それは,最低賃金の引き上げ(最近の引き上げでも40年前の73パーセントにしか上がっていない),勤労所得控除,扶養控除によって一部実現できるだろう。その経済的コストのうち少なくとも一部——おそらくコスト以上——は,最貧層の生産性の向上,そして犯罪率や生活保護給付率の減少によって埋め合わせられるだろう。よいことをすれば,きっと自分にも返ってくるはずだ。
リチャード・E・ニスベット 水谷 淳(訳) (2010). 頭のでき:決めるのは遺伝か,環境か ダイヤモンド社 pp. 191
(Nisbett, R. E. (2009). Intelligent and How to Get It. New York: W. W. Norton & Company)
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