アジア人の出来を予想以上の成果(オーバーアチーブメント)と評するのは,恣意的な表現だ。アメリカにやってきてまだ1年で,子供を公立学校に通わせている韓国人の友人に,「アジア人の予想以上の成果」という言葉を使ってみた。すると,「『アジア人の予想以上の成果』というのはどういう意味だ?」と突っかかってきた。「『アメリカ人の予想以下の成果』と言うべきだ!」というのだ。
この友人が娘の学校の終業式に出席したところ,宿題をすべてやった生徒が賞をもらっていたのに驚いたという。友人の娘はその賞をもらった2人のうちのひとりだった。友人に言わせると,宿題をやったから賞をあげるというのは,昼食を食べたから賞をあげるというくらいばかげているという。アジア人にとっては至極当然のことなのだ。この現象がアメリカ人の予想以下の成果の1つだ,と友人は言い張る。学力が高いのが本来の状態で,ほとんどのアメリカ人は多かれ少なかれ怠けていると考えるのも,まったく筋が通っている。
リチャード・E・ニスベット 水谷 淳(訳) (2010). 頭のでき:決めるのは遺伝か,環境か ダイヤモンド社 pp.
(Nisbett, R. E. (2009). Intelligent and How to Get It. New York: W. W. Norton & Company)
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