あなたの子供に何かやらせたいと思ったとき,子供がすでにそれに興味を持っていたら,それに対して褒美をあげると約束するのはあまりよい考えではない。
私は発達心理学者のマーク・レッパ―やデイヴィッド・グリーンと一緒に,保育園児の園児が,マジックペンで絵を描くという新しい作業に取り組む様子を観察した。ほとんどの子供はマーカーで絵を描き,明らかにその作業を楽しんでいた。その後,一部の園児に,マジックマーカーで絵を描いたら褒美をあげると約束すると,園児たちは喜んで絵を描いた。2週間後,再び子供たちにマジックマーカーを渡した。以前に褒美をもらった子供は,もらわなかった子供に比べて絵を描くことが少なく,絵の出来も劣っていた。
「契約」によって,遊びだったものが課題になってしまったと言える。褒美を約束されなかった何人かの子供の絵を褒めたところ,その子供たちは,褒美ももらわず褒められもしなかった子供より多くマジックマーカーで遊んだ。したがって,子供に何かをさせたければ,やったときに褒めるべきだ。やったら褒美をあげると約束してはならない。
リチャード・E・ニスベット 水谷 淳(訳) (2010). 頭のでき:決めるのは遺伝か,環境か ダイヤモンド社 pp. 238-239
(Nisbett, R. E. (2009). Intelligent and How to Get It. New York: W. W. Norton & Company)
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