結局のところ,解剖学や生理学の観点から行動を説明しても,別の疑問を生み出すだけで,説明として十分でないことがわかる。このことは,睡眠という不思議な現象についての説明と似ている。研究者は睡眠を「神経系に休息をもたらすものだ」と説明する。すると「なぜ神経系には休息が必要なのか?」,「24時間のうち16時間しか活動できないような神経系にしか進化できなかったのか?」という疑問が生じるだろう。こういった「説明」は,説明すべき謎を別の謎に置き換えているだけに思える。
カール・サバー 越智啓太・雨宮有里・丹藤克也(訳) (2011). 子どもの頃の思い出は本物か:記憶に裏切られるとき 化学同人 pp.45
(Sabbagh, K. (2009). Remembering Our Childhood: How Memory Betrays Us, First Edition. Oxford: Oxford University Press.)
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