「私が話した人たち全員に共通する特徴が1つあった」とスーザン・クランシーは述べている。「彼らは,何か異常と思われる体験,奇妙で,まともでなく,ふつうでない体験をした後で,それがエイリアンによる誘拐と関係しているのではないかと疑い始める。この異常な体験というのは人によって異なる。人によっては,いつもと違うちょっとした出来事(『朝起きたとき,どうしてパジャマが床に落ちているのだろうか』)であり,ある人にとっては,何らかの体の症状(『なんでこんなに鼻血が出るんだろうか——いままで鼻血なんて出したことがないのに』)や体についたマーク(『どうして背中にコイン形のあざがあるのだろう』),多かれ少なかれ安定した自分の性格特徴(『自分は他者と違っているように感じる。孤独で,まるで外側に立って覗き込んでいるみたいだ』)だったりする。また,これらのすべての事柄が含まれている場合もある。体験内容は幅広く多様だが,こうした体験から共通の疑問に行き当たるのだ。『一体どうしてこんなことが起きるのだ?』と。つまり,UFOによる誘拐を信じるのは,自分が体験した奇妙で,ありそうもない,得体の知れない出来事を説明したいという気持ちを反映しているのである」
人間というものは,不確かなままの状態でいるよりは,どんな説明にでもしがみつこうとするものだ。
カール・サバー 越智啓太・雨宮有里・丹藤克也(訳) (2011). 子どもの頃の思い出は本物か:記憶に裏切られるとき 化学同人 pp.200
(Sabbagh, K. (2009). Remembering Our Childhood: How Memory Betrays Us, First Edition. Oxford: Oxford University Press.)
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