陪審員の意思決定に関する諸研究によれば,陪審員はさまざまな要因を考慮して目撃証言の信頼性を判断するが,そのなかには証言の真偽を判断するのに役立たない要因が含まれている。陪審員に関する心理学実験について報告するなかで,ダニエル・シャクターは次のように述べている。
強い確信をもって証言する目撃者を目の当たりにすると,たとえその状況が目撃者が犯人を知覚し識別することが困難なものだったとしても,陪審員は,状況よりもその目撃者の信憑性に注目する傾向がある。陪審員は自信のない目撃証言よりも,確信に満ちた目撃証言を信用する。だが,目撃証言の自信の強さは目撃証言の正確さと,あったとしてもせいぜい取るに足らないほどの関係しかない。つまり,目撃者が強い確信を持って証言した場合とあまり自信なく証言した場合を比べると,自信が強い証言のほうが正確であるわけではない,ということが往々にしてある。
カール・サバー 越智啓太・雨宮有里・丹藤克也(訳) (2011). 子どもの頃の思い出は本物か:記憶に裏切られるとき 化学同人 pp.209-210
(Sabbagh, K. (2009). Remembering Our Childhood: How Memory Betrays Us, First Edition. Oxford: Oxford University Press.)
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