催眠によってパフォーマンスが向上することはない。実際には改善しないが,改善したという主観的な印象を生じさせることがあるだけである。
記憶をテストするために催眠を使用した場合,催眠は記憶を促進するのではなく,誤った想起を増加させる。心理療法においては明らかに逆効果である。
催眠状態での年齢退行は,単なる想像の産物にすぎない。幼い時期まで退行した人のなかで誰一人として,その年齢に特徴的な身体的ないし発達的兆候を示す者はいない。また年齢退行した人が,その年齢以降に獲得した記憶や技能を用いることができないという証拠も得られていない。年齢退行を受けた人は,主観的には自分が子どもになったように感じ,子どものように振る舞うかもしれないが,自分が幼い子どもだったらどう思うか想像するよう指示された催眠状態にない人と区別ができない。
カール・サバー 越智啓太・雨宮有里・丹藤克也(訳) (2011). 子どもの頃の思い出は本物か:記憶に裏切られるとき 化学同人 pp.247-248
(Sabbagh, K. (2009). Remembering Our Childhood: How Memory Betrays Us, First Edition. Oxford: Oxford University Press.)
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