本当に虐待の被害を受けた子どもや大人を信じないことが,どれほど危険なことであったとしても,本書で紹介してきた研究をもとに考えれば,誰の体験談であっても,それを信じる根拠を考え直さない限り,もはや機械的に「子どもを信じる」ことはできないように思う。ブラックやシンをはじめとした研究者たちの発見から判断すれば,信頼できる記憶であるかのように思わせるものが,特にその記憶がいろいろな場面で繰り返し語られるようなときには,逆にその記憶が誤っていることを示す特徴であることも多いのだ。
カール・サバー 越智啓太・雨宮有里・丹藤克也(訳) (2011). 子どもの頃の思い出は本物か:記憶に裏切られるとき 化学同人 pp.307
(Sabbagh, K. (2009). Remembering Our Childhood: How Memory Betrays Us, First Edition. Oxford: Oxford University Press.)
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