現代人的行動のリストに取り上げる最重要の条件は,2つある。1つはホモ・サピエンス以前の旧人には認められないこと,そしてもう1つは各地の現代人集団に共有されていることである。例えば,言語,信仰,音楽,美術を創造する能力などは,世界各地のどの現代人集団にも共通して見られるので,アフリカの共通祖先の時点で,すでに存在していたと考えるのが合理的だ。これらが旧人になく,アフリカの初期ホモ・サピエンスに存在すれば,リストの項目として申し分ない。
現代人的行動のリストの最初のものは,ヨーロッパのクロマニョン人の活動をネアンデルタール人のものと対比する目的で作られた。そいてこれをベースに,様々な修正が加えられ,これまでにいくとおりかのリストが提案されている。ここではその中で,前出のマクブレアティとブルックスの考えを要約して紹介することにする。彼女らは,まず現代人的能力には以下のような要素があると仮定した。
抽象的思考
優れた計画能力
行動上,経済活動上,技術上の発明能力
シンボルを用いる行動
海部陽介 (2005). 人類がたどってきた道:“文化の多様化”の起源を探る 日本放送出版協会 pp.85-86
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