一方,アメリカ先住民の一部の特徴には,他の集団と異なっていて独特なものがある。例えば彼らの顔つきは,全般的にアジア人と似ているとはいえ,同一ではない。こうした独自性が生じた背景には,以下のようなものが考えられる。まず,彼らは長期間にわたってほかの世界と交流をもたなかったために,わずかながらも独自の方向への進化が生じただろう。こうした通常の変化に加え,移住の際にボトル・ネック効果が働くと,変化はもっと劇的なものになりうる。例えば,南アメリカの先住民は,圧倒的にO型の血液型が多く,A型やB型はごく少ない。これは,彼らが移住していく過程で一時的に集団サイズが小さくなり(これをボトル・ネックつまり瓶のくびと表現している),そのときたまたまO型の遺伝子をもつ個体が多かったために,後の子孫たちもほとんどO型になったと説明される。このように集団サイズが小さくなると,偶然に変異の偏りが生じやすくなり,集団の様相は大きく変化しうる。
海部陽介 (2005). 人類がたどってきた道:“文化の多様化”の起源を探る 日本放送出版協会 pp.257-258
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