役所自身,90年代以降は不祥事を起こしまくっているので,偉そうに言える立場にはないのだが,マスコミに叩かれても,政治家に踏みつけられても,役所や官僚が手を抜かずに仕事をこなしていたのは「何だかんだと言っても,政策の原案を作るのは俺達だから,主導権は俺達にあるんだ」という思いがあったからだろう。
偉そうな大臣や族議員に「お前ら馬鹿か」「たかだか役人が……」と言われても,若造の二世議員に踏んづけられても官僚が文句を言わなかったのは,ここに理由があったのだろう。厚生労働省にも,そういう考えでかろうじて自分のプライドを保っている官僚は沢山いた。
しかし,僕から言わせれば,それもそろそろ限界に近づきるるあるように見えた。いくら「君達が政策の原案をつくって主導権を握っているんだよ」と言われても,そのために過労死になるような長時間労働を余儀なくされたり,政治家に公衆の面前で罵倒されたり,マスコミにバッシングされたりする中で,イニシアティブを握るために犠牲にしているものが上回り始めて,若手官僚を中心に役所を辞める者も増え出していたからだ。
中野雅至 (2011). 1勝100敗!あるキャリア官僚の転職記:大学教授公募の裏側 光文社 pp.35-36
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