まとめると,大学業界に向いている性格は,人を蹴落としてまでえらくなりたくないという人である。「教授以上の職階はない」と見なしてもかまわないし,学部長や「◯◯長」という役職は,同業者によって「すごい」とか「立派」とか必ずしも思われないのである。人によっては,教授になるのすら,雑務が増えて嫌う者もいよう。
ヘタに教授に昇格してしまったり,「◯◯長」の付く役職に奉られると,むしろ,「大変やな」とか「ようやるな」とか,同情されるかもしれない。それよりも学会や社会での活動に精を出していたり,優れた研究をまとめたりするほうが高く評価される場合も多々あるのである。この点が,民間企業や官公庁などと著しく異なる。弘兼憲史のマンガ『島耕作』のように,係長→課長→部長→取締役→常務→専務→頂点の社長と“出世”しなくても,給与体系にすごく大きな差がつくわけでもなく,大学内ではまったく問題ない。それが大学教授の世界なのである。
櫻田大造 (2011). 大学教員採用・人事のカラクリ 中央公論新社 pp.180-181
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