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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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王の遺伝子

 いったん支配階級ができあがると,支配階級の生殖における優位性が発動した。これがもっとも根本的な階級闘争,すなわち生存競争である,しかし,これは歴史家にほとんど見過ごされてきたし,そういった意味では,当事者たちも気づいていなかった。これはさまざまな形を取りうる。たったひとりの男性の系統がとてつもなく有利になる場合もある——王になるのはすばらしいことだ!アイルランドの男性人口の8パーセントで驚くほど共通性のある型のY染色体が見つかっている。そのY染色体は,アイルランドとの密接なつながりが知られているスコットランド地域と,アイルランドから国外へ出た移住者のあいだでもかなりよく見られる。世界中で,200万〜300万人の男性がこの染色体をもっており,そしてどうやらこの染色体は九虜人のニール(西暦400年頃のアイルランドの王)の直系男性の印であるようだ。1609年までの1200年間,彼の子孫はアイルランドで権力を維持し続けた。
 もっとも壮観な例は,ジンギスカンである。約800年前に,ジンギスカンと彼の子孫は北京からダマスカスまでの土地をすべて征服した。ジンギスカンは楽しみ方を知っていた。たとえば,彼の至高の喜びとはこうだ。「敵を壊滅させるには,彼らをわれの前に引き立て,彼らの財産を没収し,愛する者の悲しみを目の当たりにさせ,彼らの妻と娘を抱くがよい!」なかでも最後の項目がとくに気に入っていたようすで,彼と息子たち,およびその子孫(ゴールデン・ファミリー)は,数百年間アジアの大部分を支配し,全土でハーレムをつくった。そうすることで彼らは,あらゆる遺伝学的影響のなかで最大のインパクトを与えた。今日,中央アジアの約1600万人の男性が彼の直系であることが,独特のY染色体をもっていることによって示されている。たったひとりの男性が違いをもたらすことはありうるのである。

グレゴリー・コクラン,ヘンリー・ハーペンディング 古川奈々子(訳) (2010). 一万年の進化爆発:文明が進化を加速した 日経BP社 pp.133-134
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