アメリカ先住民が感染症に弱かったために,歴史はどんどん形づくられていった。西インド諸島へのスペイン人による最初の植民地化の試みは,実際,そのせいで危険にさらされることさえあった。タイノ族とアラワク族の人口が急激に減少したため(1530年までに,ほとんどが死に絶えた),スペイン人は労働力を確保できなくなったのだった。カリブの島々の住人は,アメリカ本土の先住民よりもっと孤立していて,病気から隔絶されていたので,抵抗力がさらに低かった。
ピルグリム・ファーザーズがアメリカ本土に入植したとき,その土地にはほとんど人が住んでいなかった。その3年前に何らかの疫病(おそらく天然痘)によって先住民部族の大部分が死に絶えていたからだ。スクワント(ピルグリム・ファーザーズに生き抜くすべを教えた先住民)は,その部族のわずかな生存者のひとりであったらしい。また,のちにニューイングランドに入植した新教徒たちも,アメリカ先住民のあいだで病気が大流行して壊滅状態に陥ったことによって助けられたし,ジェームズタウン(イギリス人にとって最初のアメリカ入植地)の安全が脅かされずにすんだのも,伝染病のせいで地元部族の力が弱まったからだ。
グレゴリー・コクラン,ヘンリー・ハーペンディング 古川奈々子(訳) (2010). 一万年の進化爆発:文明が進化を加速した 日経BP社 pp.200-201
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