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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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ジョストによれば

 危機感が大きければ大きいほど,私たちは見慣れたものにしがみつく。家庭料理が食べたくなるときのことを考えてみるといい。ほかの条件が同じであれば,危機感にさらされている人は自分が属する集団,大義,価値観に普段にも増してこだわる。実験によると,人びとに自分の死について考えるように促すと(「あなたが実際に死んだとき自分はどうなると思うか,できるだけ具体的に書いてください」というふうに),自分と宗教や人種を同じくする人にはいつもより優しくなるが,外部の人に対してはより否定的になる。死の恐怖に直面すると,政治的あるいは宗教的信念も極端になる。自分のいずれは死ぬと意識させられた愛国的アメリカ人は,星条旗をふるいの代用に使うことに対して「対照群の愛国的なアメリカ人に比べて」より高い抵抗感を示した。自分の死について考えるように促された敬虔なキリスト教徒は,十字架をハンマーとして使うことに対してより強い反感を示した(慈善団体のみなさんは,覚えておくといい。私たちは自分の死について考えさせられた後は財布の紐を緩めがちになるのだ)。別の研究では,危機的な状況下では,人はマイノリティー集団に対してより否定的になるとわかった。不思議なことに,このことはマジョリティーの人びとだけでなく,マイノリティーの人びと自身についても当てはまる。
 さらに言えば,人を自己の利益を大きく損なうような政策に賛同させる,あるいは少なくとも承認させることも可能だ。心理学者であるジョン・ジョストの弁によれば,「封建主義,十字軍,奴隷制,共産主義,アパルトヘイト,タリバンのもとで生きた人びとの多くは,自国の体制は不完全だが,道徳的には認められるものであり,[ときには]他の選択肢よりもよいとすら信じていた」。要するに,心の汚染はきわめて深刻な問題なのである。

ゲアリー・マーカス 鍛原多恵子(訳) (2009). 脳はあり合わせの材料から生まれた:それでもヒトの「アタマ」がうまく機能するわけ 早川書房 pp.75-76
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