あなたは信じないかもしれないが,アメリカ国民を見る限り,靴のサイズと一般常識のあいだには高い相関がある。小さいサイズの靴を佩いている人に比べると,大きいサイズの靴を履いている人のほうが歴史や地理の知識が豊富なのだ。かといって,大きな靴を買えば賢くなるわけではない。いや,脚が大きいからと言って賢いわけでもない。じつは,たくさんの相関がそうであるように,この相関は思うほど重要なものではない。なぜなら,私たちは相関と因果関係を混同しがちだからである。私が述べたばかりの相関は真実だが,ここではある要素が別の要素を引き起こしているという,私たちがついついしてしまいがちな判断は間違いである。靴のサイズの例で相関が見られる理由は,小さな足(したがって小さな靴)を持つ人はこの地球の新しい住人,すなわち乳幼児で,まだ歴史の勉強をするには幼過ぎるだけなのだ。私たちは成長するに連れて学ぶが,成長そのものが学習につながるわけではない。
ゲアリー・マーカス 鍛原多恵子(訳) (2009). 脳はあり合わせの材料から生まれた:それでもヒトの「アタマ」がうまく機能するわけ 早川書房 pp.241
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