進化は,生物界が完成品だという考え方を廃止したということがわかる。それによって進歩(あるいは退歩)という考え方や,世界は将来どんなふうになるかという思弁に道が開かれる。こうした考え方は,生命科学者にとってはあたりまえになる。自然界の数理的法則を研究する物理学者は,その法則が不変だという性格を強調する。20世紀になる前は,そうした法則が最もうまく応用できたのは月や惑星の運動だった。天文学の世界で見られる変化は,生物界で見られるものよりも遅く,単純で,予測しやすい。20世紀になってようやく,天文学は星や銀河の起源や進化についての根本的に新しい理論とつきあうようになり,宇宙が拡大することも発見される。
ジョン・D・バロウ 松浦俊輔(訳) (2000). 科学にわからないことがある理由 青土社 pp.76
(Barrow, J. D. (1998). Impossibility: The limits of science and the science of limits. Oxford: Oxford University Press.)
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