複合的な構造物には,そこを越えると突然複合度が飛躍するようなしきいがあるらしい。人の集団を考えてみよう。1人の人間でも多くのことができる。そこにもう1人加われば,さらに関係ができる。しかし徐々に少しずつ人が増えると,複合的な相互関係の数は膨大になる。経済システム,交通システム,コンピュータ・ネットワーク,どれもすべて構成する部品の間にできるつながりの数が増えるとともに,それらの特性に突然飛躍が生じる。意識は,脳のような連結した論理ネットワークで非常に高度な複合性に達したときに飛躍的に発現する,最も特異な特性である。
ジョン・D・バロウ 松浦俊輔(訳) (2000). 科学にわからないことがある理由 青土社 pp.126
(Barrow, J. D. (1998). Impossibility: The limits of science and the science of limits. Oxford: Oxford University Press.)
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