文明がその周囲の大規模な世界を操作する能力を考えることによって,文明の「タイプ」を立ててきた。これはなかなか難しい操作である。膨大なエネルギー資源を必要とするし,間違ったことになっても後戻りしにくい。どうしても重力がかかるし,例外なくすべてに作用する自然界の力として知られているのはそれだけなので,そのスイッチを切ることもできない。そこで,実用的には,世界の操作は大きい方ではなく小さい方に広げた方が,費用対効果はずっといいということがわかった。今度は,テクノロジー文明の分類を,小さな存在を制御する能力に従って,タイプI-,タイプII-というように,下に向けて行ない,タイプΩ-まで広げてみよう。これらの文明は,次のように区分される。
タイプI- 身の丈程度の大きさの対象を扱える。構造物を築き,鉱石を掘り,個体を結合したり壊したりできる。
タイプII- 遺伝子を操作し,生物を作り替えたり開発したりし,自身の部分を移植したり交換したりし,自分の遺伝子コードを読み取り,操作することができる。
タイプIII- 分子と分子結合を操作し,新しい素材を創造できる。
タイプIV- 個々の原子を操作して,原子規模のナノテクノロジーを創出し,複合的な形態の人工生命を創出できる。
タイプV- 原子核を操作し,それを構成する核子を操作できる。
タイプVI- 根本的な素粒子(クォークとレプトン)を操作し,素粒子の集団に組織だった複合性を創出できる。
最終的には
タイプΩ- 空間と時間の基本構造を操作できる。
ジョン・D・バロウ 松浦俊輔(訳) (2000). 科学にわからないことがある理由 青土社 pp.222-223
(Barrow, J. D. (1998). Impossibility: The limits of science and the science of limits. Oxford: Oxford University Press.)
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