テレビなどで,いわゆる<成功した人>のインタビューを見ていると,そういった人々にはいくつかの共通点があることに気づく。すなわち,自分に自信があり,自分の業績を誇らしげに語って,相手の賛辞を当然のことのように受け入れる,という共通点である。
<いや,その人は成功したのだから,そうなるのはあたりまえだ>と,もしかしたら,読者の皆さんはそう思うかもしれない。だが,<その人はもともと自分に自信があり,ほかの人より優れていると思っていた——つまり自己愛性の性格をしていた。だからこそ,成功したのだ>と,そのようには考えられないだろうか?実際,そのことを裏づける研究もある。
もしそうなら,能力が同じであれば,自己愛性の性格の人のほうが成功する確率は高いと言える。また,自己愛性の性格の人は競争を厭わず,何かをする時にも失敗を恐れない。自分を売りこむのもうまい。自分の能力に自信があって,人に負けないと思っているからだ。したがって,競争が必要な状況,あるいは,思いきった決断が要求される状況では,多少なりとも自己愛性の性格の特徴を備えているほうが有利だと言える。
また,このことに関連して,企業の経営者に話を聞くと,優れた営業マンは自己愛性の性格をしていることが多いという。というのも,自己愛性の性格の人は相手の気持ちを動かすのがうまく,断られても傷つくことが少ない(自分のせいではないと考えるからだ)。また,成功したいという気持ちが強いため,困難な状況にも耐えられるというのである。
フランソワ・ルロール&クリストフ・アンドレ 高野 優(訳) (2001). 難しい性格の人との上手なつきあい方 紀伊國屋書店 pp.129-130
(Lelord, F. & Andre’, C. (1996). Comment gérer les personnalités difficiles. Paris: Editions Odile Jacob.)
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